台湾で撮影された、スナック菓子に群がるヒアリ/2017年8月撮影(c)朝日新聞社
台湾で撮影された、スナック菓子に群がるヒアリ/2017年8月撮影(c)朝日新聞社
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「ヒアリ定着の危機感は、確実に上がっています」

【洪水であふれた水にヒアリの群れの「いかだ」が? 写真はこちら!】

 そう語るのは、茨城県つくば市にある国立環境研究所生態リスク評価・対策研究室の五箇公一室長だ。外来生物防除を専門とし、南米原産で強い毒をもつ外来種・ヒアリ対策の最前線で活躍してきた。

 大阪府は9月28日、大阪市住之江区の人工島でヒアリを1000匹以上確認したと発表。府によると、1000匹以上の発見は初めてのことだ。2017年に日本で発見され、世間を騒がせたヒアリだが、時は過ぎ去り世間の記憶から薄れつつあった。この生物は現状どうなっているのか、五箇室長に話を聞いた。

■一度は減ったヒアリ

 南米原産のヒアリは腹部末端に毒針を持ち、刺されるとやけどのような熱さや激しい痛みを生じることから、漢字では「火蟻」と表される。色が赤茶色ということもあり「アカヒアリ」とも呼ばれる。ただ、毒を持つとはいえ致死性は低く、むやみに恐れる必要はないが、痛みやアナフィラキシーショックを伴うこともあるので注意は必要だ。

 国内では17年5月、中国から神戸港へ運ばれてきた海上コンテナの中から発見されたのが「初」とされる。だが、それ以降、輸入コンテナに紛れて侵入するヒアリは減少傾向にあった。背景には中国の取り組みがある。18年、五箇室長をはじめとする日本の専門家チームが中国政府との間でヒアリの対策会議を行い、中国国内での防除を訴えた。前述のように国内に侵入するヒアリの半数以上は、中国から来たコンテナのものだからだ。

「元を断たなければ」という思いで五箇室長たちが訪問した当時、中国国内では対策としてヒアリ駆除専門の会社も立ち上げられており、多くの機材を投じてヒアリの防除に注力する様子がうかがえたという。

 そんな取り組みの甲斐もあり、ヒアリの日本への侵入量は減少していた。しかし、20年に新型コロナウイルスの爆発的感染が起こると、日本や中国において、外来種対策はコロナ禍によって停滞してしまう。

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相次いで野生のヒアリの巣が見つかった!