ヒアリのにおいを含んだ缶を探し当てるヒアリ探索犬/2018年3月、鹿児島市の鹿児島大(c)朝日新聞社
ヒアリのにおいを含んだ缶を探し当てるヒアリ探索犬/2018年3月、鹿児島市の鹿児島大(c)朝日新聞社

 加えて、中国の経済発展も外来種の拡散を助長したと考えられる。中国では交通網の成長が著しく、急激な開発に伴って運搬される土砂や資材に紛れてヒアリも移動する。中国農業農村省の発表によれば、現在、中国国内でのヒアリ分布面積は、12年当時と比較して3倍近くにものぼるとされる。ヒアリの封じ込めは実質的に瓦解してしまったのだ。

 発生国での駆除という防波堤を失った結果として、日本へのヒアリの侵入が増える、または増えている可能性が高い。20年、日本ではコロナ騒動で環境省や自治体の動きが取れなくなり、国内の調査や防除も停滞。東京港と横浜港、名古屋港で相次いで野生のヒアリの巣が発見されていく。

「巣の規模は大きく、羽アリ(繁殖行動である“結婚飛行”する次世代の女王アリ)まで見つかっている状態。見つけた巣は速やかに薬剤を散布して駆除を行いましたが、周辺に分巣が広がっている恐れがあることから、モニタリングを強化しています」(五箇室長)

 そうした矢先に起こったのが、2021年9月の大阪における1000匹以上のヒアリ発見だった。

 これは専門家からしても「桁違いの数」だという。

「今まで見つかってきた巣と比べて、深く、広く、かなりしっかりした巣が見つかりました。現在調査中ですが、規模の大きさから数年前から巣が作られていたことも考慮しなくてはいけません。ヒアリの調査が進んだのは、初めて国内で発見された17年以降。実際問題、ヒアリがいつから侵入していたかというのはわからないのです。あくまで、最初に発見されたのが17年の神戸だったというだけ。それよりも前から入ってきていた可能性はありますし、人の目をすり抜けて巣を作っていることも考えられます」(五箇室長)

 大阪港内のエリアについては、発見されたヒアリは全て駆除されている。現在は、港内の土中深くにヒアリが潜んでいないか、大阪港からヒアリが貨物に乗って流出していないかを調査中とのことだ。一方で、ヒアリの危険は関西だけのものではないことも留意すべきだ。都内でも今年に入り、5月から10月にかけて毎月ヒアリが確認されている。

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中国だけがヒアリ“輸出国”ではない