このクラスで培った強い絆は、6年生の一番の見せ場である運動会で証明されることになりました。
■みんなと喜びたい
6年生の運動会の学年種目は、代々『全員リレー』と決まっていました。親としては、息子がいることでクラスのバランスを損なうことだけは避けたく、場合によっては距離を縮めたり応援でも構わないと伝えていたのですが、初めは1/3だけ走ると決めて調整していたはずが、2/3になり、最終的には他の子どもと同じ距離を走ることになりました。
(学級通信より)
『6年生の担任になった時から子どもたちと一緒に考えようと思っていた【クラス対抗リレーをどう走るか】という議題。これまでコウくんはハンデをもらって走っていました。そのことに何の疑いもなく、批判する声もありませんでしたが、引っかかることがありました。コウくんがどう思っているのか?です』
たつひろ先生は、息子が鎌倉めぐりを歩き切り、自信を付けた後に、どうしたいかを聞くと決めていたそうです。
息子はこう答えたようです。
「クラスが負けるのは申し訳ないからハンデが欲しい。でも本当は、足は絶対に大丈夫だから、同じ距離を走ってみんなと喜びたい」
■「勝つ」って?
最後の運動会で、勝ちを逃すことになるかもしれないチャレンジでした。
先生は、さまざまななゲームを通じ、勝敗時のうれしい気持ちや葛藤を『勝つって?』(ただ勝てば良いのか?)をテーマに、時間をかけて子どもたちに投げかけて下さいました。
私はその様子を伝える学級通信が届く度に、他のご家庭の反応が気になりましたが、クラスのママたちはその都度メールをくれたり、会った時にはハグをしてくれたり、泣きながら思いを伝えてくれたりし、そんなクラス内の雰囲気から、たつひろ先生の判断に委ねて見守ることにしました。
結果は優勝。完全にクラスの作戦勝ちでした。
朝早くに集まってバトンパスの練習をし、走る順番を何度も練り直し、スタートと息子の前後とアンカーには速い子が走るように組み込まれ、天才的な運動能力を持つ親友くんたちに助けられました。
息子のような、よちよち歩き程度の速さの子が走っても優勝できたという事実は、決して奇跡ではありません。子どもたちの気持ちが一点に集中すると、大人の感覚では予測できない効果をもたらすこともあるのです。