同じ米国株の投信でも、組入銘柄数が全然違う。「『S&P500』の中身は?」は「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」、「全米株式の中身は?」は「楽天・全米株式インデックス・ファンド」の月次レポート(いずれも2021年6月30日現在)より編集部作成
同じ米国株の投信でも、組入銘柄数が全然違う。「『S&P500』の中身は?」は「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」、「全米株式の中身は?」は「楽天・全米株式インデックス・ファンド」の月次レポート(いずれも2021年6月30日現在)より編集部作成

 時価総額1500万ドル(約16億5000万円)以下で流動性の低い銘柄は対象外だが、小型株も含めてほぼすべての米国株を時価総額ベースで指数化している。

 つまり小型株の成長や衰退の影響も受けるということだ。全体相場が小型株も含めて好調なら全米株式のほうがS&P500より好成績となるだろうが、全体相場が悪いと小型株は大型株以上に売られやすい傾向がある。

「S&P500」と「全米株式」、両者の組み入れ上位銘柄はほぼ同じ。全米株式のほうが大型株の組み入れ比率が低い分、小粒な成長株が多く組み入れられていることになる。

 たとえば、ここ数年で株価が急上昇した電気自動車のテスラがS&P500に採用されたのは2020年12月。それ以前は全米株式インデックスのほうにだけ組み入れられていた。とはいえ、小型株の中には不振企業も多く、指数の足を引っ張る可能性も否定できない。

 ここ5年でいえばS&P500と全米株式の5年間のパフォーマンスの差は0.05%(2021年8月末現在)で、S&P500のほうがわずかに上だった。誤差の範囲内である。

AERA Money 2021秋号
AERA Money 2021秋号

 エリートぞろいの500社か、「良い子も悪い子もまとめて」買うか。結局は好みで選べばいいという結論になるが、せっかく500の優良企業を選んでくれているのだから、素直にS&P500に乗ればよいのではないだろうか。

■冷戦が続く間は米国株最強か

 では、米国株投信とともに人気の「全世界株式」投信とS&P500なら、どちらを選ぶべきか? 米国株一辺倒で投資するのはリスクがある、でも全世界株式投信よりも現状のリターンは米国株のほうが上……。ファイナンシャルプランナーの西原憲一さんに聞いた。

「今はイケイケの米国も、20年先は衰えているかもしれません。しかし、最近の米中冷戦や自国IT企業への締めつけなどを見ると、中国の未来は米国以上に多難という考え方もあります。

 米国の一人勝ちが10年は続くと考えるなら、現在の『勝ち馬』といえるS&P500に便乗するのも悪くはない。全世界株式とS&P500を半分ずつでも」

 そう、別に投資信託は1本しか買えないわけではない。ネット証券であれば100円単位で買えるのだから、迷うなら両方買ってしまえばよいのである。

 なお、アエラ増刊「AERA Money 2021秋号」では、つみたてNISAで買える米国株の投信(S&P500、全米株式)全10本を、規模/コスト/リターン/運用効率/リスクの5項目で忖度なしに100点満点で独自採点。そのランキング結果を公表している。

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野尻広明(のじり・ひろあき)/三菱UFJ国際投信 デジタル・マーケティング部 シニアマネジャー。格安インデックス投信の「eMAXIS Slim」シリーズに立ち上げから関与。投信そのものの運用にも精通する「投信博士」的存在

(編集・文/綾小路麗香、伊藤 忍)

※『AERA Money 2021秋号』から抜粋 

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