この20年近くで僕らは結婚していただけなのに、十分すぎるお金をもらってしまったのです。そして結婚20年目に突入する今年、ランドセルを買って終わりにしようと。

 でもね、もうランドセル頼んじゃってるんですよ。だから土屋さんにメッセージを送りました。「土屋さん、もうランドセル頼んじゃってるので大丈夫ですから。もう終わりで大丈夫ですから」と。するとメッセージが帰ってきて「嫌だ」と。嫌だじゃないんですよ。

 そして続くメッセージには「ランドセル、二つあったっていいだろ」と。僕が「二つは困ります」と返すと「なんでだよ。常識を疑えよ」と。

 その言葉でハっとする。ランドセルは一つ。という常識。なんで二つじゃダメなんだっけ?

 常識に疑問を持ち、そこを掘り始めることから、新しいものが作れるのかも……と思ってしまったり。そもそも自分たちの結婚も常識とははずれたところから始まったし。

 だから返しました。「ありがとうございます」。というわけで、結婚20年目になり、土屋さんの1日100円生活は終了です。

 有言実行って難しい。しかも長く続けることは本当に難しい。

 カメラが回ってなくても、たくさんの人が見ているわけじゃなくても、「おもしろい」と思って決めたことを貫き通す。

 観客がたった二人でも、やり続ける。

 土屋さん、今までありがとうございました。この20年分の100円は笑福が大きくなったときに彼に何か「おもしろいこと」で渡します。

 ■鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)が好評発売中。毎週金曜更新のバブル期入社の50代の部長の悲哀を描く16コマ漫画「ティラノ部長」と毎週水曜更新のラブホラー漫画「お化けと風鈴」の原作を担当し、自身のインスタグラムで公開中。コミック「ティラノ部長」(マガジンマウス)は10/4に発売になった。「お化けと風鈴」はLINE漫画でも連載スタート。YOASOBI「ハルカ」の原作「月王子」を書籍化したイラスト小説「ハルカと月の王子様」が好評発売中。長編小説『僕の種がない』(幻冬舎)が発売中。

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鈴木おさむ

鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

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