新型コロナの感染者が急減する一方で、第6波に備えて岸田文雄首相が医療体制の強化に動き始めた。全国で11万人以上の自宅待機者があふれた第5波では、ピーク時にコロナ即応病床と申告し、多額の補助金を受け取っていながら実際は使用されなかった「幽霊病床」が多く存在し、問題化した。
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政府分科会会長の尾身茂氏が理事長を務める独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)傘下の病院でも次々と「幽霊病床」問題が発覚。岸田政権からJCHOの姿勢に厳しい目が向けられ始めている。
「この夏の感染拡大時にコロナ病床が十分に稼働しなかった反省も踏まえ、いわゆる幽霊病床を見える化し、感染拡大時の使用率について8割以上を確保する具体的方策を明らかにする」
10月15日午前、岸田首相は新型コロナウイルス感染症対策本部を開催し、こう述べた。AERAdot.が入手した岸田首相が出席した会議資料には以下の記述があった。
<いわゆる「幽霊病床」の実態把握。感染拡大時の コロナ用の病床の使用率について、少なくとも8割を確保する具体的な方策を明らかにする>
<国立病院機構法、地域医療機能推進機構(JCHO)法に基づく『要求』をはじめ、公的病院に関する国の権限を発動し、公的病院の専用病床をさらに確保する>
国立病院機構法と地域医療機能推進機構法には、厚労相が公衆衛生上重大な危害が生じるおそれがある緊急の事態に、国立病院とJCHOに対して必要な措置をとるように求めることができるが、こうして名指しするのは異例だ。
冒頭の岸田首相の発言の前日14日、尾身氏は官邸を訪れ、岸田首相に対しコロナ対策をレクチャーしたが、尾身氏が理事長を務めるJCHOや国立病院機構などが議題の対象に上げられた形だ。
「尾身氏は岸田首相にリーダーシップのあり方をレクチャーされていましたが、政府としてはJCHOの幽霊病床の補助金問題に強い問題意識を持っています。会議ではJCHOも名指されています。尾身氏は岸田首相と会談後、記者団に対し『首相は病院のコロナ貢献を可視化する方針だ』などとレクしていました。しかし、実際に政府が行うのは『貢献』ではなく、『非貢献』の可視化で、JCHOもターゲットになっています」(官邸関係者)