イラスト/もりいくすお
イラスト/もりいくすお

 訃報を聞き、高岡独演会のトリの一席は季節外れの『青菜』にした。『青菜』は師匠の十八番。お客さんが師匠の一言をも聞き漏らすまいと張りつめていながら、それでいて温かい空間。普段あんなにおっかない顔なのに、小三治師匠の高座はいつもごきげんに見えた。「笑わせようとするな」とよくおっしゃってましたけど、師匠もけっこう「笑わせよう」としてるように見えました。「何もわかってない」と言われそうですが、『孤高の噺家』『求道者』と称される芸人らしからぬ師匠の、時々見えるその可愛らしい芸人ぽさが好きでした。小三治師匠、お疲れ様でした。

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。新刊書籍『人生のBGMはラジオがちょうどいい』(双葉社)が発売。ぜひご一読を!

週刊朝日  2021年10月29日号

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