太田秀樹医師●おおた・ひでき 日本在宅ケアアライアンス事務局長、医療法人アスムス理事長

Q3 在宅医療にすると、家族にはどんな負担がかかりますか?

A.介護サービスを利用して負担を軽減することも可能です

 食事や排泄など介護の負担はかかります。しかし、介護サービスなどを利用すれば負担を軽減できます。介助の負担を減らす福祉機器などもあります。

 全身状態によっては、たんの吸引、胃ろうへの栄養剤の注入などの医療的ケアを家族が担います。訪問看護師などの指導により習得することも可能ですし、介護職がたんの吸引・経管栄養をおこなえる制度もあります。

 入院した場合の家族への負担を見てみると、病院に洗濯物を取りにいかなければならない、決められた時間帯にしか面会できないなど、面倒なこともあります。自宅で看るからこそ、病院に出向く必要もなく、家族の負担が減る場合もあります。

Q4 がんなど痛みの緩和ケアも在宅医療で受けられますか?

A.いろいろな薬の種類があり在宅で受けられます

 がんなどの痛みを和らげる治療も、在宅で受けられます。治療には、さまざまな薬が使われます。そのうち緩和ケアで力を発揮するのが医療用麻薬です。

 現在、医療用麻薬には、のみ薬のほか、貼付薬、座薬、注射薬などいろいろな剤形があり、使いやすくなっています。また、点滴をセットしておき、痛みを感じたときに、本人が手元のボタンを押すと、薬が体内に入る治療機器もあります(自己調節鎮痛法)。

 痛みの強さやどのように痛むのかを在宅医に伝え、我慢することなく過ごせるようにしましょう。

Q5 高齢で一人暮らしでも在宅医療を受けられますか?

A.介護や支援の体制をつくれば可能です

 高齢の一人暮らしで在宅医療を受けている人もいます。自宅で最期を迎えたいという強い思いがあり、それを実現した人もいます。

 1人での生活を続けるためには、全身状態や生活状況に応じた介護などのサポート体制が重要になりますから、ケアマネジャーに相談しましょう。

 また、「高齢者や一人暮らしの人を地域で支える」という地域のサポート力も強い味方になります。地域包括支援センターや民生委員、友人・近隣の人などを含む関係者が情報を共有すれば、具合が悪い様子に誰かが驚いて救急車を呼んでしまい、しないと決めていた入院や治療をすることになるという事態を避けられます。

(文・山本七枝子)

監修/太田秀樹医師
●おおた・ひでき
日本在宅ケアアライアンス 事務局長
医療法人アスムス 理事長

※週刊朝日ムック『さいごまで自宅で診てくれるいいお医者さん2022年版 コロナで注目!在宅医療ガイド』より

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