フェンス際の打球を好捕する中日の福留孝介(C)朝日新聞社
フェンス際の打球を好捕する中日の福留孝介(C)朝日新聞社

 優勝争いも佳境の9月16日、CSへ向けての再調整もあり内川は出場選手登録抹消となった。今季は主に代打として起用され38試合出場、打率.208、0本塁打、2打点(10月24日時点)。開幕直後の3月31日には新型コロナウイルスの濃厚接触者に認定され隔離生活を強いられるなど不運もあった。しかし目立った活躍は7月9日の広島戦(神宮)でのサヨナラ安打くらいでは本人も納得いくはずがない。

 一方の福留は、阪神8年目の昨年は43試合出場、打率.154、12安打、1本塁打と低迷し自由契約となった。

「ユニフォームを着させていただくことが出来て感謝の一言。少しでもチームが勝つことの力になれるように。若い選手が野球を続けていく中でぼくが経験したことを少しでも伝えていくことが出来たらいい」(福留/20年12月18日の中日移籍会見)

 本人の現役続行の意向を踏まえ07年以来14年ぶりの中日復帰。1年契約3000万円と阪神時代の1億3000万円から大幅減となったが、復帰会見では真っ先に感謝の気持ちを口にした。自らの衰えを自覚しており、それでもプレー場所を与えてくれた古巣の期待と温情を感じたからだ。

「攻守に精彩を欠いた原因は視力低下だと思われる。球界きってのバットコントロールを誇る好打者が打ち損じをする機会が増えた。仮にパワーが落ちてもボールをしっかりミートできれば良いが、それができない。またシートノックでも飛球が見づらそうなことが多かった。技術ではカバーできない部分であり、阪神側は選手として限界という判断だった」(阪神担当記者)

 今季、優勝を争っている阪神は有望な若手選手がチームを牽引した。夏場から大きく調子を崩したがルーキー佐藤輝明など、福留とポジションが重なる選手もいて戦力外は必然だった。しかし中日もチームは過渡期であり外野手では根尾昂、岡林勇希、高松渡、伊藤康祐などの若手を積極起用したい状況がある。かつての功労者とはいえ福留を獲得する必要性はあったのだろうか。

「チームのために尽くすことを覚え周囲からの信頼が厚い。かつての福留は自分本位にプレーすることもあった。しかしメジャーリーグや老舗・阪神でプレーしたことで多くの苦労を味わった。自らの晩年をチームに捧げる覚悟を感じる。期待の若手を多数抱える中日にとって、これ以上の手本はいない。練習、試合への取り組みやグラウンド外での過ごし方などプロとしてのすべてを学べる教科書。3000万円でも安過ぎるくらい」(中日担当記者)

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2人のレジェンドの今後は…