日米通算170勝か。メジャーから日本復帰後の7年間は故障で思うようなボールが投げられず苦しんだ。つらかったと思う。でもこの7年間の葛藤は必ず生きる。ひじ、肩、そして頸椎(けいつい)……。そのほかにも痛くないところなんてないだろう。いろいろな治療の仕方、そしてリハビリを行う者のメンタル面もわかってあげられる。人の心の痛みにも敏感な大輔なら、今の若手に寄り添える。指導者としての引き出しは誰にも負けないだろう。
野球界への恩返しの仕方って、一つじゃない。解説者として、野球の魅力やワンプレーのすごさを伝えることもそう。アマ野球の普及に関わることもそうだし、野球を外から見ることで、新しくやりたいことが発見できるかもしれない。
1年に1度くらいしか会うことはできなかったが、登板後のスッキリした表情は近年見たことのないものだった。
大輔の23年間の長い現役生活、私はその一部に関わったにすぎない。それでも関わった者を本当に大切にしてきた男だ。惜しむ声、慰労の拍手の大きさが彼の偉大な足跡を示している。
松坂大輔投手、本当にお疲れさまでした。
東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝
※週刊朝日 2021年11月5日号