そうした局長会での不当な扱いと連動させるかのように、日本郵便も地区連絡会の副統括局長だった通報者の1人を19年3月に部会長へ降格した。
局長同士の会議では、「お前に気を遣いながら会議とかできん。自分で進退を考えろ」「お前の礼儀がなってないから、成績も悪いっちゃろうが」などと罵声を浴びせる局長もいた。被害者が体調を崩してうつ状態となり、休職に追い込まれる例も相次いだ。
パワハラを受けていた副部会長2人が2019年8~9月、「パワハラなどで職務が困難」などと記した辞退届を九州支社長に提出したところ、2人は届けたとおりに降職となった。
日本郵便は今春以降、2019年当時の処分を見直し、元局長ら計9人を停職などの懲戒処分とした。さらに7月には、通報者情報を漏らした本社コンプライアンス統括部の最高責任者だった元執行役員やパワハラへの対応が不十分だったとされる九州支社長ら幹部も処分された。
日本郵便の志摩俊臣(しま・としたか)常務は7月の記者会見で、「通報者特定やパワハラ被害にあった社員におわびし、防げなかった点を反省している」と謝罪した。
だが、通報者が降格させられた人事が通報者の不利益にあたるのではないかと問われると、「降任したいとの申し出に支社は一応慰留した」などと説明。通報者への不利益にあたるかどうかは明確にせず、人事上の被害回復についても「現時点では考えていない」と述べていた。
福岡地裁判決では、局長会を抜けた局長は疎外感や情報不足で仕事の支障が出やすく、「日本郵便で役職に就くことは困難」とまで認定されている。
被害者代理人の壬生隆明弁護士は「被害者は今もまわりの局長から無視されるなど、不利益を受け続けて苦しんでいる」と指摘した。
局長会から不当に除名されたせいで、役職に就けず役職手当ももらえない実情は問題だとし、日本郵便に職場環境の改善を求めていく考えだという。