政治学者の三浦瑠麗氏が同日夜に行ったツイートが参考になる。氏は問題の原因は、戦後皇室の機能を極限まで縮小したことにあると見る。

 私たちは一方で皇室に大きな精神的役割を期待している。だからみな結婚に口を出す。ところが実際は皇族には限られた国事行為と血の継承ぐらいしか許されていない。結婚したら民間人になるというのに、発言の自由すらない。その矛盾が皇族、とくに女性皇族の人権侵害につながっている。今後は、皇室への期待値を下げるかあるいは逆に皇族の自由を拡張するか、どちらかしかあるまい。

 天皇制はそもそも戦後民主主義と矛盾している。平成期はその矛盾が上皇と上皇后の資質によって見えなくされていた。その綻(ほころ)びが一気に出たのが、今回の出来事のように思う。

東浩紀(あずま・ひろき)/1971年、東京都生まれ。批評家・作家。株式会社ゲンロン取締役。東京大学大学院博士課程修了。専門は現代思想、表象文化論、情報社会論。93年に批評家としてデビュー、東京工業大学特任教授、早稲田大学教授など歴任のうえ現職。著書に『動物化するポストモダン』『一般意志2・0』『観光客の哲学』など多数

AERA 2021年11月8日号

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東浩紀

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東浩紀(あずま・ひろき)/1971年、東京都生まれ。批評家・作家。株式会社ゲンロン取締役。東京大学大学院博士課程修了。専門は現代思想、表象文化論、情報社会論。93年に批評家としてデビュー、東京工業大学特任教授、早稲田大学教授など歴任のうえ現職。著書に『動物化するポストモダン』『一般意志2・0』『観光客の哲学』など多数

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