仮に女性・女系天皇が認められたとしても、そのときには皇位継承者がいなくなっていたということもありえるのだ。
負担が大きいのは、男性皇族も同じだ。上皇さまのいとこで「ヒゲの殿下」の愛称で親しまれた三笠宮家の故寛仁さまは、1982年に皇籍離脱発言をして世間を騒がせた。皇族として生きる重圧に悩み、アルコール依存症に苦しんだことも告白した。原氏は言う。
「保守派の人が女系天皇に反対し、眞子さんの結婚をめぐる経緯でも、一部の人が厳しく批判している。こういった人たちは『皇室の伝統や品位を大切にしたい』と考えているのかもしれませんが、結果的に天皇制の継続を危うくしています」
皇室を取り巻く環境は、近年になって激変した。特に、眞子さんの結婚をめぐる騒動では、ニュースサイトのコメント欄やSNSでの批判が、眞子さんの「複雑性PTSD」の原因になった。
宮内庁の西村泰彦長官は28日の会見で、皇室に関する誤った情報やインターネット上の書き込みに対して問われると「すべての報道に一つひとつ宮内庁の考えを発信していくことはかなり難しい」と述べるにとどめた。宮内庁の情報発信は「時代の変化に伴って、今後どういうあり方がふさわしいのか研究していきたい」と話したものの、具体的な対策がとられるかは現時点では不明だ。
この皇室の危機をどう乗り越えるのか。前出の原氏は言う。
「特に東日本大震災以降は、国民のために全身全霊を捧げる天皇と皇后の姿が多くの人に感銘を与えました。それによってきわめて倫理性の高いスタイルができたことが、眞子さんへのバッシングにつながっている。一方、宮中祭祀の負担や皇位継承などの問題は、議論が進んでいません。もっと皇室についての情報を公開して、新しい時代の皇室について議論をすべき時期に来ています」
時代の変化に適応した皇室像を再び築かなければ、皇位を継承したいと考える皇族がいなくなる可能性すらある。「日本の象徴」としての天皇制は、危機を迎えている。
(本誌・西岡千史、大谷百合絵)
※週刊朝日 2021年11月12日号