一人の女の生き方を示されたという点で、象徴である天皇につながる女性の勇気ある改革に拍手を送りたい。式やお金や皇族というしがらみなど何ほどのものだろう。
人として個として生きるお手本といってもいい。まず大学で同級生に恋することを知る。そのすばらしさ。その恋を、三年も会えずに育てた意志。反対があればあるほど、困難が重なるほど、恋は逆に燃え上がる。
その意味で反対した人やスキャンダルを書きたてたマスコミは二人の恋を成就させた立役者といっていい。困ったことに悪い噂の方が面白く、人々は根掘り葉掘り知りたがる。
特に男女のことになると、格好の話題だ。今までこれほど週刊誌を賑わわし、人の口の端にのぼった皇族の結婚があっただろうか。自分のことのようにハラハラした人々も多かった。
その分、好むと好まざるとにかかわらず、眞子さんは皇室を人々に近づける役割を果たしたともいえる。
これでひと区切り、自分たちの心を大切にして穏やかに暮らしていただきたい。これからの方がたいへんかもしれないが。
下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。この連載に加筆した『死は最後で最大のときめき』(朝日新書)が発売中
※週刊朝日 2021年11月12日号