下重暁子・作家
下重暁子・作家
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 人間としてのあり方や生き方を問いかけてきた作家・下重暁子氏の連載「ときめきは前ぶれもなく」。今回は秋篠宮家の長女・眞子さん(30)と小室圭さん(30)との結婚会見について。

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 小室眞子さんと圭さんの結婚会見が行われた。金屏風やら紹介役やら一切ない実にシンプルで堂々とした会見だった。特に緊張気味の圭さんに比べ、眞子さんのゆとりすら感じられる態度は立派で、しっかりとした自分の考えと意志の強さを感じさせられた。

 三年ものブランクがあってもお互いの心で支えあったこの二人なら大丈夫。なぜなら女の方がしっかりしているから。その方がうまくいくことは、数多くの例が証明している。

 とりわけ心に残った言葉がある。「圭さん」という呼び方はもとより、「一人の人として生きていきたい」という覚悟。皇室の一員でもなく、氏素性に頼るでもなく、一人の人間として個であるという強い思いが伝わってきた。

 最初、質疑応答を行う予定だったが、前夜になって急遽、書面での回答になったのは、今まで数多くの誤解や中傷にさらされて恐怖すら感じることがあったからだけでなく、一語一語、言葉を大切にしたい気持ちのあらわれだろう。

 一つの作られた物語がひとたび歩きはじめると、反論する機会がないのが、現在の日本の皇室であり、ヨーロッパの王族のような自由はない。

 デンマークで夜、オペラを見た時のことだ。ボックス席の一番前に一人の女性がさり気なく坐り、全幕が終わると最後まで拍手をして立ち去った。

「どなたですか?」隣席の人に聞くと「あっ、現在のデンマークの王女です。女王も人に紛れてデパートへ買い物にお見えになります」

 なぜ日本では何事も大仰になるのだろう。本人の意思に反して奉られてしまう。その意味で「一人の人として生きたい」という想いは眞子さんの中で大きく育っていたのだろう。多くの反対や数々の因習をのりこえた今回の結婚だった。

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