そういう意味では、いずれも19年に大型契約を結んだノーラン・アレナド三塁手(27歳でロッキーズと8年2億6000万ドル)、マニー・マチャド三塁手(26歳でパドレスと10年3億ドル)、ブライス・ハーパー外野手(26歳で13年3億3000万ドル)らの真価が問われるのは数年後だろう。

 また大物選手との長期契約はチーム編成上の足かせとなることも見逃せない。現にアレナドはロッキーズの低迷とフロントとの不和が重なり、契約からわずか2年後の21年2月に早くもカージナルスへトレードされてしまった。アレナドの場合は今後数年はトップクラスの活躍が見込めるため引き取り先があったが、冒頭のエルズベリーやデービスのように上がり目がないと判断されれば移籍もできず飼い殺しとなり、本人にとっても球団にとってもいいことが一つもない。

 一方、NPBのFA事情はMLBとは大きく異なる。そもそもMLBでは契約期間を満了すれば自動的に全選手がFAとなるのに対し、NPBでは資格を得た選手が権利行使を宣言する必要がある。またMLBが累計6年でFA権を得るのに対し、NPBでは高卒で累計8年、大卒・社会人でのプロ入りは累計7年かかる。つまりNPBのFA選手は必然的に若くとも30歳手前、遅咲きならば30歳過ぎになるということだ。

 プロ野球選手で30歳前後と言えば、たいていは全盛期の真っただ中。逆に言えば数年後には下り坂になる可能性が高い。さらにFA宣言後にどの球団とも契約がまとまらなければ所属球団を失うリスクもある。そのため資格を取得しても宣言残留や行使せず残留する選手も多く、FA移籍する選手は毎年数人ほどというのが実情となっている。

 その数少ないFA移籍選手たちも、新天地で旧所属チーム時代以上の活躍ができたケースは多くない。ここ10年ほどで一定の活躍をしたと評価できるのは、まだ衰えの見られない直近3年の移籍組を除けば中田賢一投手(中日ソフトバンク)、涌井秀章投手(西武ロッテ)、岸孝之投手(西武→楽天)、糸井嘉男外野手(オリックス阪神)、増井浩俊投手(日本ハム→オリックス)くらいだろうか。FA選手の活躍という切り口では、むしろMLBよりNPBのほうが成功率が低いかもしれない。

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“青田買い”で年俸抑制を図るMLB