■突っ走るパワーもらう
例えば、習字やピアノは「習うもの」だって誰もが思いますよね? 一方、人を愛するとか、人に気持ちを伝えるみたいなことは「いつでもできる」と考えている。でも、本当は簡単なことじゃない。どう愛するべきかを考えたうえで愛するんだ、ということが書かれている本だと思います。
林真理子さんは小説もエッセーも好きでよく読んでいますが、中でも『野心のすすめ』は好きです。最近の流行(はや)りなのか、世間には「求めない生き方をしよう」みたいなメッセージがあふれています。でも林さんは、自分でお金を稼いで、好きなところに住んで、好きなものを買う楽しさだったり、「もう一歩先に挑戦してみよう」みたいなことを書いていらっしゃって。周囲に合わせるだけがすべてじゃない、時には自分ファーストで突っ走るパワーを、読み返すたびにもらっています。
『夏子の冒険』の主人公・夏子ちゃんも、自分のしたいように生きている感じがして、すごく好きな人物。道を切り拓いていく姿はかっこいいなと思いますし、読んでいてスカッとします。気分がモヤモヤしている時におすすめです。
出口治明さんの『還暦からの底力』は、雑誌の企画で対談させていただく機会があって、その時に読みました。「還暦から」とあるので、私にはまだ少し遠い話なのかなと思っていたのですが、出口さんがつづられる人生の素晴らしさや、前向きなメッセージが興味深くて。どの世代が読んでも刺さる部分がきっとあると思います。
(編集部・藤井直樹)
※AERA 2021年11月8日号