なぜ、社会的制裁が量刑に影響を与えるのか。交通事故裁判などの刑事事件に詳しい神尾尊礼(たかひろ)弁護士は、量刑の大枠は犯行態様や結果などで決まり社会的制裁はほぼ加味されないとした上で、刑罰の目的までさかのぼって考えるのが分かりやすいと述べる。
「刑罰は『やったことへの報い』の側面が強いと言われています。つまり、やったことに見合った刑が科されるということであり、受けるべき罰の総数は決まっています。社会的制裁は刑罰とは違いますが、一種の罰です。このような罰を受ければ、受けるべき刑罰の量は減ります。従って、社会的制裁を受けていれば刑が軽くなり得ます」
神尾弁護士によれば、プライベートなことを執拗(しつよう)に書かれたり、殺害予告されたりするまでいくと社会的制裁として考慮される余地が出てくる。また、離婚や失職などの社会的制裁は判決文に書かれることが多いので、ネットの書き込みを契機に離婚に至ったなどの要素があれば加味される可能性があるという。
「ただ、これは現時点での話で、ネットの書き込みは相当長期間保存されること、ネットリンチがかなり苛烈化していることなどの理由から、将来的には加味される範囲が広くなるかもしれません」
(編集部・野村昌二)
※AERA 2021年11月8日号