King Gnuの井口理さんがホストを務める対談連載。今回のゲストは、ポルノグラフィティの岡野昭仁さんです。中学2年生の頃から大ファンだった井口さん。そんな“憧れの人”が対談場所に指定してきたのは、夢を抱く若者たちの街、東京・下北沢でした。AERA2021年11月8日号に掲載した対談の初回をお届けします。
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井口 この連載では、僕が対談相手からイメージしたものをプレゼントするという決め事があるんですけど、今回は伊勢志摩サミットの時にオバマさんも飲んだという日本酒を持ってきました。
岡野 ありがとう。へえ~、「作 智」っていうんだ。ずいぶん厳重な箱に入ってるね……ん? この「昭仁様」ってのしは自分で書いたの?
井口 はい。店のご主人に「下手でもいいから心を込めて書いてください」と言われて。
岡野 確かに井口君の気持ちを感じる(笑)。大事に飲ませてもらいます!
井口 今日の対談場所に下北沢を選んだのは、何か理由があるんですか?
岡野 上京したての頃に住んでいたのが下北沢でね。広島の高校を出て、しばらく大阪で活動した後、いよいよ東京に拠点を移そうとなった時に、どこに住めばいいのか全然わからなくてさ。当時のレコード会社のディレクターが姉御肌の人で「私、下北に住んでるから、お前らもこの辺に住め。面倒見てやるから」みたいに言ってくれて。それでメンバーそれぞれでこの近辺に部屋を借りて住むことになった。2年ぐらいいたかな。
井口 思い出深い街ですね。
岡野 うん。本当にお金がなかったから、そのディレクターの家で飯を食わしてもらったり、みんなでわいわいゲームして遊んだり。東京での新生活っていう意味ではすごい楽しかった。ただ、当時は「下北沢出身のバンド」っていうのが一つのジャンルになっていて。今もあるのかな?
井口 たぶんありますよね。
岡野 ブランド化したこの場所で、果たして俺らはやっていけるのか?みたいな気持ちもあった。実際、何回かライブをやったんだけど、全然ダメだったと思う。