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 歯科医院に欠かせない歯科衛生士。歯石やプラークの除去などでお世話になった人は多いことでしょう。超高齢社会の中で、今後、ますます必要とされる仕事だといわれています。しかし、一般の人にはまだその重要性は認知されていないかもしれません。そんななか、歯科衛生士を目指すのはどのような人なのか、志望動機は何だったのか、歯科医師の若林健史先生に、自身のクリニックで働くスタッフのケースを聞きました。

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 私の歯科医院(東京・恵比寿)には26歳から56歳まで、合わせて6人の歯科衛生士がいます。なお、6人すべてが女性です。なぜうちのクリニックに限らず、この仕事に女性が多いのかというと、歯科衛生士法で長い間、歯科衛生士は女子の仕事、と記載されていたことがあります(実際には男性の資格取得も可能でした)。また、歯科衛生士の養成学校の多くが女子のみの募集でした。現在は法律も変わり、大学でも資格を取得できるところが増えたことから、男性もこの仕事に就きやすくなっています。

 話を元に戻しましょう。6人のスタッフのうち最も長くやってくれているのは50代の女性です。新卒(21歳)で当院に就職し、現在まで30年以上、働いています。

 彼女は中学時代、勉強を頑張り、都内でも有名な進学校に入りました。しかし、受験勉強に疲れたこともあり、高校卒業後は大学に行かずに、「何か手に職をつける仕事がしたい」と考えるようになったといいます。手先が器用だったこともあったようです。

 最初はテレビで見た「染色職人」に憧れましたが、

「修業期間が長く、一人前になるまでには大変だ」と親に反対されます。

「何かほかにいい職業はあるだろうか」

 と考えていたときに、ふと、小学校のときに通っていた歯医者の記憶が思い起こされました。

 むし歯が多く、毎年、学校健診で歯医者に行くように学校から手紙を渡されました。それを持って夏休みに歯科医院に通っていたのです。そこで働く女性(歯科衛生士)が生き生きとしていて、とても楽しそうに見えたことが、現在の仕事を選ぶきっかけになりました。

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