「こういう店が家の近くにあればいいなという声を思った以上にSNSで見かけるようになり、確かに映画館のようにいろんな場所にあったほうが豊かかもしれないなと思ったんです」
利用者は30代が中心で女性が6割を占める。1時間で約1千円、2~4時間で約2千円を目安に、「もう出たほうがいいかな」と心配しなくていい料金体系になっている。
松山から旅行に来た大学生の北野水葵さん(22)は、普通のカフェだと思って下北沢店に入った。
「案内書きに驚きましたが、読み応えがあって引き込まれました。コーヒー豆をひく音、本のページをめくる音も心地よくて居心地がよかった。次は自分の本を持ってきて読みたいです」
友人に勧められ、初めて利用した会社員の女性(29)は、
「家だと気が散ってしまうけど、2時間集中して読書ができた。みなさん本を読んでいるので、そこに溶け込むような不思議な体験でした」
阿久津さんも、店内に複数の人がいるときのほうが個々の満足度が上がると感じている。
「みんなで読んでいるというか、勇気づけ合っている感じがします。自分の過ごし方がこれでいいんだという確信のフィードバックが回っているような気がするんです」
コロナ前には同じ空間で同じ本を読み、感想は話さない「会話のない読書会」を開いていた。そろそろ再開したいという。(ライター・仲宇佐ゆり)
※AERA 2022年11月14日号より抜粋