ハートシート治療の適応条件は、虚血性心疾患の治療後、心不全が重症化した人、左室駆出率という心臓の血液を送り出すポンプ機能が35%未満で、NYHA分類という心機能分類がIII以上(身体活動に高度の制限のある心疾患者)である場合に治療が適応になる。

■iPS細胞による再生治療も

 現在、さらに、大阪大学を中心にiPS細胞による心筋シート再生治療も実施されている。

 浅井医師は、ハートシートのような再生治療や補助人工心臓および心臓移植などの進化は重要である一方、原因疾患である心臓病をできるだけ早く見つけて、正確に治療することの大切さを強調する。

「内科でのカテーテル治療も、患部を焼灼する、クリップで留める、装置で広げるなど、さまざまな治療が進化して治療の選択肢は増えています。ただし、原因疾患を根本的に治療できるのは手術です。冠動脈の虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)、心臓弁膜症、心筋症ほか、あらゆる心臓病は治療が完遂すれば、心不全を予防できると考えています」

 さらに浅井医師はこう続ける。

「ここ2年のコロナ禍において、心臓の病気が知らぬ間に進行してしまっている人が増えているのではないかということを非常に懸念しています」

 コロナ禍による受診控えは無理もないことだが、思い当たる症状があるなら、早急に近所の循環器専門の医師に診療を受けてほしいと浅井医師は話している。

(伊波達也)

週刊朝日  2021年11月19日号

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