加賀まりこ [撮影/小山幸佑、ヘアメイク/野村博史、スタイリスト/飯田聡子、衣装協力/KEI Hayama PLUS]
加賀まりこ [撮影/小山幸佑、ヘアメイク/野村博史、スタイリスト/飯田聡子、衣装協力/KEI Hayama PLUS]

林:舟の中の売春婦の役で、モノクロ映画ですけど、気高い美しさで、少年の目には女神みたいに見える感じがすごくよかったです。昔から若い監督さんに胸を貸してあげていたんですね。

加賀:というか、私の父が映画のプロデューサーやっていて、兄貴も姉貴も就職先が映画会社の裏方でしたから、ふだんから映画の話を聞き慣れていて。「私でお役に立つことがあるなら」というのは常にありました。

林:加賀さんは少女のころから、文化人が集まっていた「キャンティ」に行っていて、「うちの養女になれ」って言われるくらい、かわいがられてたんでしょう?

加賀:あそこのパパ(川添浩史氏)が、うちの父に私を養女にほしい、って言ったみたい。

林:「キャンティ」で加賀さんが、一人でコーヒーを飲んでる姿を想像するだけでゾクゾクしちゃいますよ。絵になって。

加賀:いろんな職種のトップの人たちの会話を、テーブルの端っこに座って聞いてるのが、私にとってはすごくぜいたくで好きな時間でしたね。丹下健三さんの建築についての話もおもしろかったし、藤間のご宗家の日本舞踊の話もおもしろかったし。

林:私、「加賀さんの前に加賀さんなし。加賀さんのあとに加賀さんなし」と思ってるんです。あれから半世紀以上たってるけど、あのときの加賀さんと似た人を探し出すことができないですよ。「私の若いころに似てる」という人、見たことないでしょう?

加賀:まあそうね。今はみんな「事務所の管理下」になってるからね。一対一で話したらおもしろいのかもしれないけど、みんなガードがついてるから、おもしろいのかどうかわからない。私は事務所に縛られてなかったからね。20歳で女優をやめてパリに行っちゃったのも、しがらみがないからできたんですよ。

林:パリで、映画界の巨匠のゴダールに「もっとフランス語が上手になって、僕の映画に出てくれ」って言われたんでしょう?

加賀:ゴダールさんは「中国女」という映画を撮ろうとしてたんだけど、私はそのとき、ずっと女優でいたいと思ってなかったから。いくらゴダールさんがそう言ったって、フランス語もぜんぜんできないのに出たいなんて思いませんよ。国際女優になるなんてこと、これっぽっちも思ってないから。

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