◆勝つ気足りない 過去へと回帰!?

今年の阪神は春先、この戦力で優勝できなかったら、またしばらく優勝できないだろう、と評されていた。だから、守備力という課題を克服できなかったことも含め、勝てなかったのは監督の責任だと言われている。
「梅野の件も、サンズの件も、おかしな話ですから。監督と何かがあったはず。だけどコロナ禍の取材規制で、『日本一うるさい』と言われるわれわれベテランの虎番記者が現場に行きにくくなっていることもあり、ほじくり返されないで済んでいる訳です(笑)。自分らで言うのもヘンですが、これはタイガースの選手にとっては、もっけの幸い、野球に集中できる有利な環境でしょ(笑)。それでも優勝できなかった。なのに監督続投です」(記者B)
そんな監督の下で戦力が今季よりダウンするとしたら……ファンの不安は想像に難くない。

「フロントにとって矢野さんは、文句を言わない、扱いやすい監督なんです。外様で大物だった野村克也さんと星野仙一さんは例外で、よく文句を言う監督は短命。代表が藤田平さんでした」(記者A)
この話を聞いていて、思い出した。かつて私は当時の阪神球団オーナーに、不躾にもこう尋ねた。
「タイガースは、無理して勝たんでもいい、勝ったら金が要りすぎるからやめとけと考えている、シブチンや、と言われてますが?」
いつも率直に話してくださった彼の表情が、さすがにこのときは一瞬、固まり、こういう言い方をされたのだった。
「そう思われても結構です。少なくとも、かつてのウチには、皆さんにそうとられても仕方ないフシがあった。言うたらウチには、勝てばそれに越したことはないけど、いくら負けても、旗振って声をからして応援してくださる熱心なファンがいる。そういうファンの熱意にあぐらをかいとるようなところがあったことは否定できません」
老婆心ながら、タイガースが、そんな過去に回帰しなければいいが、と思ってしまう。(渡辺勘郎)
※週刊朝日 2021年11月26日号