AERA2022年11月14日号より
AERA2022年11月14日号より

 つまり、リユースショップに持ち込んだら二束三文の値段しかつかない金銭的価値の低いものでも、Chainの中では、誰かがその品を欲しいと思っていたら、その物の価値は「最大化」している状態になる。

■価格差は気にならない

 実証実験では、実際にこんな交換が起きた。ドリップバッグコーヒーと、ビジネス書、ポーターの名刺入れ。金銭的な価値をつけるとしたら、コーヒーは数百円、本が1千円程度、ブランドものの名刺入れは数千円となるだろう。名刺入れを出品してビジネス書を手に入れたユーザーは、損が大きかったことにはならないのか。

「名刺入れの出品者にヒアリングしましたが、『結局不要になったものだから特に損をしたとは思わなかった』と。出品したものと手に入ったものの価格差は気にならないのだということがわかりました」

 いずれは物々交換だけでなく、買い物やパソコン作業、場所の貸し借りなどにも広げたさまざまな「価値交換」ができるプラットフォームを目指している。

 ところで物々交換の魅力は大いに実感したが、少々気になることもある。物々交換はGDPには計算されない。記録的な円安や怒濤(どとう)の値上げラッシュ、上がらない給料。金銭的な価値に左右されない経済の形を人々が楽しむ背景に、「お金」からみんなの心が離れていることが、はたして無関係であると言えるだろうか。(編集部・高橋有紀)

AERA 2022年11月14日号

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