縄文時代の人々の生活に詳しい同館学芸員の副島蔵人さんは、当時からおすそ分けの精神でいろんなものが行き交っていたのではないか、と見ている。

「当時の人たちの生活の中で、明らかに“等価交換”のようなものが行われていた形跡はあまり見られません。諏訪地域で産出した黒曜石(こくようせき)は、北海道にまで渡った記録がありますが、リレー形式のようにぐるぐる物が回っていたのではないかという気がします」

 参加者の様子を見ていた平澤さんはこう感じたという。

「もらうこと主体というより、あげること主体という気持ちで参加されたお客さんが多かったように思います。お金で解決しない、気持ちの交換のようなものをみんな求めているのかなと感じました」

■複数人での物々交換も

 縄文時代にはない現代ならではのインターネットを利用して、さらにユニークな物々交換のプラットフォームもできつつある。

「あげる」と「もらう」のマッチングプラットフォーム「Chain」は、福岡に拠点を置くベンチャー企業BLUE STYLEが昨年10月にリリースしたサービスだ。

 複数人で交換できることが最大の特徴だ。ユーザーは自分が不要になったものを出品し、他の人が出品したものでほしいものがあれば「ほしい」マークをつける。複数人の「ほしい」の輪がつながれば交換成立。

 システム上、この交換の輪は上限なく何人でも構成することができる。1対1で交換する場合は両者の欲求が一致する必要があるが、複数人なのでその必要がない。

 サービス開発に至ったのは、既存のリユースサービスに限界があると感じた経験からだ。「値付け」のややこしさ、売り手と買い手の力関係、転売の横行などがその一例だ。これは「お金」を媒介することに伴う問題でもある。代表の外谷洋二郎さんが説明する。

「僕たちは、価値には2種類あると考えています。一つは値付け・査定による誰が見ても同じ社会的価値。もう一つは主観的な価値。そのものをほしいかほしくないか、個人の感情や思いも価値だと考えているんです」

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