ご当地のめずらしい柑橘類や、放し飼いで育てた鶏の肉や卵など、北海道から沖縄まで各地の特産物と交換してきた。相手が差し出すものはどんなものであっても断ったことがない。

 でも、交換するものがいくら相当なのか気になりませんか?

「それは気にしたことがありません。そもそも全国のおいしいものが食べたいし、面白いからやっています。箱のデザインや同封された生産者のメッセージなど、宅配のアイデアとして得るものもたくさんありました」

 九州に住む人から、普段食べているりんごと全然違ってとてもおいしかったとお礼の電話をもらったこともある。そうした交流もまたうれしいのだという。

■貨幣価値によらない

 ネットを介した交換だけではない。10月22日に長野県富士見町で行われた「高原の縄文王国収穫祭」でも物々交換イベントが行われた。収穫祭は同町にある井戸尻考古館が毎年主催しているが、物々交換は今年初。企画した同考古館の学芸員・平澤愛里さんが説明する。

「縄文時代に行われていたような、貨幣価値によらないモノと人の交流が、収穫祭に集まるみなさんの間から生まれたら面白いと思い、企画しました」

 山梨県との県境に位置する富士見町には204カ所もの遺跡があり、その8割が縄文時代の遺跡だ。中でも代表的な井戸尻遺跡は、1966年に国の史跡に指定され、井戸尻史跡公園として整備され町内外の人に親しまれている。

 もともと収穫祭には、地元の人が外から来た人をもてなす意味合いがあるという。例年は考古館で栽培している古代米などを振る舞っていたが、コロナ禍で飲食物の振る舞いが難しくなってしまった。物々交換であれば、人との接触も少ない。収穫祭の目的に沿って、物々交換の品は、野菜や米などの収穫物や地元の特産品、縄文にまつわる品や伝統工芸品などに限定。持参したものにはカードをつけて「どこからきたの?」と「どんなもの?」を記入してもらった。

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