AERA2022年11月14日号より
AERA2022年11月14日号より

「1998年のドル高・円安局面では、為替レートと5年移動平均線とのかい離率が30%を超えた直後にトレンドが反転しました。それだけにとどまらず、1980年以降の推移を検証してみると、ドル・円相場は5年移動平均線とのかい離率がほぼ±30%の範囲内で循環してきたことがわかります」(同)

 今回もすでに5年移動平均線とのかい離率が30%を突破しており、ドル高・円安が最終局面を迎えている可能性が考えられる。吉田さんによれば、「今後3カ月~半年のうちに相場の転換点が訪れても不思議はない」という。しかも、過去の歴史的な円安局面が終焉を迎えた際には、急激に円高方向へ戻す動きが観測されている。相場が一気に一方向へと進みすぎた反動で、まるで振り子のように大きな揺り戻し(リバウンド)が発生するケースが多いのだ。

 円安の出口が見えてきたかもしれないとはいえ、油断は禁物だと言えるだろう。1998年に140円台後半でピークアウトした後の展開もそうであったように、円安トレンド発生以前の水準まで戻すにはかなりの歳月を要することが考えられる。

 たとえピークアウトしても、年初の水準と比べれば、今後も円安の状態にあることは避けられそうにない。これまでに進んできた円安は輸入物価の上昇に結びついており、原材料価格の高騰によって日本国内でもインフレ傾向が強まっている。

 すでに様々な商品・サービスの値上げが実施されているが、コストの上昇が価格に転嫁されるまでにはタイムラグがある。円安が一服した後も、値上げラッシュが続くことが想定されるわけだ。(金融ジャーナリスト・大西洋平)

AERA 2022年11月14日号

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大西洋平

大西洋平

出版社勤務などを経て1995年に独立し、フリーのジャーナリストとして「AERA」「週刊ダイヤモンド」、「プレジデント」、などの一般雑誌で執筆中。識者・著名人や上場企業トップのインタビューも多数手掛け、金融・経済からエレクトロニクス、メカトロニクス、IT、エンタメ、再生可能エネルギー、さらには介護まで、幅広い領域で取材活動を行っている。

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