AERA2022年11月14日号より
AERA2022年11月14日号より

 果たして、当時と現在の為替相場には何らかの共通点があるのだろうか? 過去を検証することによって、今後の展開を探るヒントが見つかるかもしれない。こうした着眼点で取材に臨んだところ、マネックス証券チーフ・FXコンサルタントの吉田恒さんは次のように述べる。

「当時と今では、物価の推移がほぼ正反対と言っても過言ではないでしょう。足元では世界的にインフレが進んでおり、欧米ほどではないものの、日本でも物価高への懸念が強まっています。これに対し、1998年は日本で長期的にデフレ傾向が続くスタート地点となりました」

 ドル高・円安が進んでいるのは、外国為替市場でドルを買って円を売る動きが活発化していることを意味している。だが、大勢の投資家がそのような行動を起こす「理由」も、当時と今では大きく異なっている。

 吉田さんの指摘のように、今回のドル高・円安トレンドは世界的にインフレ傾向が強まる中で発生している。インフレの進行を抑えるため、米国の中央銀行に相当するFRB(連邦準備制度理事会)が大幅な金利の引き上げを続けてきたことが大きな要因となっているのだ。

 金利が上昇すると利息の負担が重くなり、お金を借りて資金を調達する動きが鈍る。併せて、人々の購買意欲も低下し、資金やモノ・サービスの需要が減ることで、物価上昇の抑制に結びつく。ただ、米国が利上げを進める一方で、日本は長らく金融緩和政策を続けており、金利はゼロ同然の状況となっている。

 つまり、日米の金利差が急速に拡大しているのだ。円で日本国債を買うよりも、ドルに換えて米国債を買ったほうがはるかに高い利回り(利息収益)を期待できる。こうしたことから、円を売ってドルに換える動きが活発化し、為替相場でドル高・円安が進んでいるわけだ。

「米国の金利上昇に伴って“ドル買い”の動きが顕著になり、円安の進行はその裏返しとも言える現象です。対照的に、1998年のドル高・円安は、日本の先行きを悲観した“円売り”が主因だったとの解釈が主流になっています」(吉田さん)

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