AERA2022年11月14日号より
AERA2022年11月14日号より

■円売りよりドル買い

 当時、為替相場で円が強烈に売り込まれたのは、金融システム不安が深刻化していたからだ。前年には北海道拓殖銀行や山一証券、1998年にも日本長期信用銀行や日本債券信用銀行といった大手金融機関の経営破綻が頻発。日本経済に対する悲観論が高まっていった。

 また、政府・日銀が介入に踏み切るタイミングにも大きな違いが見られるという。今回は規模こそ史上最大となったが、実行に移したのはかなり円安が進行してからだった。

「90年代後半の円安局面では、最初の介入が1997年11月で、ドル・円相場が130円以下の水準だったタイミングで実施されています。当時の円安は、1995年の80円が起点となったことが理由の一つでしょう。もう一つ考えられるのは、ドル高・円安の理由。先述したように、今回は金利差拡大を背景に、“円売り”よりも“ドル買い”の色彩が濃くなっています」(同)

 今号発売直前の11月1~2日に開催された米国の金融政策決定会合(FOMC:連邦公開市場委員会)でも0.75%の利上げが決定し、金利差はいっそう拡大している。

 もっとも、それまでの利上げが次第に効き始め、需要が鈍化しつつあることも直近の経済指標からはうかがえる。その傾向が強まってくれば、さらなる利上げの必要性が薄れてくるのも確かだ。外国為替市場において、そのような転換点を先読みした動きが顕在化する可能性もある。つまり、ドル高・円安がピークアウトすることも想定されるのだ。5年移動平均線と呼ばれる指標と現在のドル・円相場の推移を照らし合わせても、その予兆がうかがえるという。

■反動で揺り戻しも

 移動平均線(MA)とは、一定期間ごとに為替レートの平均値を算出していき、その数値の変化を折れ線グラフにしたものだ。5年移動平均線は5年間ごとの平均値の推移を描いた曲線で、長期的な方向性を示すと考えられている。短期的に為替レートが5年移動平均線とかけ離れた動きになっていても、やがては収斂する(類似の方向へ動く)というのが金融市場の経験則だ。

暮らしとモノ班 for promotion
【フジロック独占中継も話題】Amazonプライム会員向け動画配信サービス「Prime Video」はどれくらい配信作品が充実している?最新ランキングでチェックしてみよう
次のページ