■ウクライナ支援 慎重論強まるか

 今回も下院では与党の民主党が半数を割り込み、野党の共和党が多数派になりそうだ。大統領が不在になった場合の継承順位が副大統領に次ぐ2番手の下院議長は現在、民主党のペロシ氏が務めているが、このポストも共和党に奪われそうだ。

 下院で共和党が多数を占めれば、バイデン政権が求める重要法案などは大幅修正を余儀なくされる。さらに、議事堂襲撃事件に対するトランプ氏の関与を調べてきた特別委員会は解散されるだろう。下院の共和党は、バイデン大統領の次男、ハンター・バイデン氏がウクライナや中国で続けてきたコンサルタント業務に絡む疑惑を調査する構えだ。共和党の下院議員の多くは外交問題に関心は薄く、国内問題に目が向いている。ウクライナへの軍事支援についても慎重論が強まるだろう。

 上院でも共和党が多数を占めるようだと、バイデン氏は政策が進められなくなり、「死に体」となるのは必至だ。いずれにしても、米国の政治は「内向き」になる。一方で民主、共和両党とも中国に対する警戒感は強く、米中対立は続く。中国に対抗する安全保障体制を強化するためにも、日本の防衛費増額を求める声が強まるという構図である。

 岸田文雄首相は「防衛力の抜本的強化」を掲げ、現在5兆円余の防衛費を今後5年間で倍増させる方針だ。財源の議論も進められ、法人税などの増税が検討されている。中間選挙で共和党が議席を伸ばし、米国が内向きとなる中で、東アジアでの米国の軍事費負担を日本に肩代わりさせる動きと重なって見える。

 一方で急速に進む円安で物価高は加速。米国はインフレ抑制が最優先で、円安・ドル高の基調は維持したい。日本政府・日銀が円安是正のために為替介入しても米国は同調してくれない。内向きの米国は、さらなる円安・ドル高を望むだろう。

 岸田首相は、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)と自民党との癒着や急激な物価高による支持率低下という「内憂」に見舞われている。そこに、内向きの米国という「外患」が加わることになる。

週刊朝日  2022年11月18日号