さらに、今回もダークホースとして箱根に向かう創価大の緒方貴典(3年)に注目したい。出雲駅伝では1区(8キロ)でラスト1キロのスピード勝負に敗れて区間11位。しかし、本人の適性は「さらに長い距離」である。事実、今年3月21日の新潟ハーフマラソンでは、学生トップ(全体3位)の1時間4分43秒でゴール。箱根出場校の選手たちが多く出走した11月14日の世田谷ハーフマラソンでも、青山学院大と駒澤大の “2強”のランナーたちに続いて4位に食い込み、タイムも1時間3分01秒に伸ばした。
全日本は不出場だった創価大だが、前回の箱根の5区で区間2位の快走を見せた三上雄太(4年)、嶋津雄大(4年)ら経験者が多く残っている。ここに前回補欠から一気に評価を高めている緒方がロードでの強さを発揮して“いぶし銀”の走りを披露すれば、再び旋風を巻き起こせる。
全日本で3位に入って総合力の高さを見せた順天堂大では、ルーキーの浅井皓貴(1年)が箱根のキーマンになるかもしれない。豊川高時代の5000メートルの記録は14分16秒40。同13分34秒74の東洋大・石田洸介(当時東農大二高)を筆頭に13秒台が当たり前となった中で全国的には目立たない存在だったが、今年3月末の記録会で1万メートル29分11秒39の自己ベストを記録すると、そこから10月の時点で28分45秒31までタイムを伸ばした。チームには、全日本2区で9人抜きを披露した三浦龍司(2年)がおり、野村優作(3年)、四釜峻佑(3年)といった主力勢も好調。ここに伸び盛りの新戦力が加われば、さらに面白いレースを展開できる。
そして、出雲&全日本のリベンジを誓う青山学院大では、西久保遼(3年)の“箱根デビュー”を期待したい。鳥栖工高時代に全国大会に出場し、大学1年時から5000メートルで13分台を記録した西久保。今年に入っても、4月に1万メートル28分21秒39の自己ベストを記録し、5月の関東インカレでは2部ハーフマラソンで駒澤大の花尾恭輔(2年)、東京国際大のルカ・ムセンビ(3年)に競り勝って見事に優勝を飾った。しかし、学生三大駅伝では、今年の出雲、全日本も含めてメンバー外。箱根へ向けても激しいチーム内競争が続くが、スタミナ自慢の男が出番を得ることができれば、これまで我慢してきた分も自らの推進力に変え、必ず主役級の走りを見せてくれるはずだ。
毎年、予期せぬ番狂わせが起こる箱根駅伝。出雲、全日本より、走る人数も距離も伸びることで、より一層、チームの総合力が問われることになり、「エース以外」のランナーたちの走りが重要になる。号砲まで残り1カ月余り。ここに挙げ切ることができない幾多の伏兵ランナーたちが、新春のスポットライトを浴びるための準備を着々と進めている。