この『PLUTO』の成功で、手塚プロには、原作を単なる原作にしてはいけない、新しい才能によって生まれ変わらせなければならない、というポリシーが徹底される。
これ以降も、『どろろ』などが他のクリエーターの手によってリメイクされることになる。
手塚プロの社長松谷孝征は、もし手塚が生きていれば、どう判断しただろうかということを常に考え、新しいものに挑んできたという。
手塚眞は、こう考える。
「父は新しもの好きでした。もし、今生きていたならば、スマホをスワイプすることで、コマが変わるのにあわせた新しい作品を描きたいと言ったでしょう」
先週の木曜日(11月3日)は、もし生きていれば手塚治虫の94回目の誕生日だった。
下山 進(しもやま・すすむ)/ ノンフィクション作家・上智大学新聞学科非常勤講師。メディア業界の構造変化や興廃を、綿密な取材をもとに鮮やかに描き、メディアのあるべき姿について発信してきた。主な著書に『2050年のメディア』(文藝春秋)など。
※週刊朝日 2022年11月18日号