イラスト/もりいくすお
イラスト/もりいくすお

 高座を降りる。担当者はニコニコ顔。ん? 買いに走ったんじゃぁないの? 「師匠! 改めてタコライスとゴーヤチャンプルを買いに……」。げ、やっぱり!? 「すいません! 余計なコト言って! 洒落なんです!(汗)」「いや……売り切れだったので、ミミガーの和え物を買ってきました!」。ミミガーっ!?

 訳もわからず、とりあえず彼女をハグしそうになった。なぜ代わりにミミガー? でもちょうどいいよ! ホッとしたよ! 気まずくならずに済んだよ! 最高のバランス感覚! 「ミミガー、大好きなんです!」。私は笑顔でハグをした(つもり)。

 帰りの新幹線。名古屋から新横浜までにビールを3本。てんむすにミミガーを二切れのせると、まるで翼が生えたよう。この可愛いヤツに乗って、どこまでも飛んでいけるような気がした。

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。新刊書籍『人生のBGMはラジオがちょうどいい』(双葉社)が発売。ぜひご一読を!

週刊朝日  2021年12月3日号

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