また人生100年時代といえども、定年後も長く働くことを前提にローンを組むこともリスクが高い。会社員で高収入である仕事は、一般的に多忙であることが多い。忙しく働き続けることで、体調を崩すことがないとは言い切れない。
「10年ほど前までは、60歳以降は働かない前提で考える人が多かったのが、ここ最近は70歳まで働くことを見据えてローンを考える人が増えている」とは、首都圏を中心に住宅購入における相談実績も多いファイナンシャルプランナーの飯田敏さん(FPフローリスト)。40代半ば~後半の住宅購入も増加傾向にある中、「定年後もローンを払い続けるシナリオにしかなり得ないが、本当に大丈夫だろうか」といった相談も増えているという。
「危機管理という視点では、夫婦共働きであっても、『どちらかが働けなくなったら』という視点のもとでローンを組んだ方が良い。『70歳まで健康で働けるはず』と、自分が病気をしない前提で考えることにもリスクがあります。また総支払額だけを見て、『住宅ローンは短めに組んだ方が有利』と、最初から短期間のローンを組むことは危険。長期の住宅ローンを組み、繰り上げ返済をうまく利用して、結果的に短期間で完済することはできても、一旦短期で組んだ住宅ローンを長期にすることは原則としてできません」(飯田さん)
新築マンション価格が高騰し、高止まりが続く中、「今は新築マンションを買うことは避けた方が良い」という声もある。新築マンションの価格は、土地や建物などにデベロッパーの利益やプロモーション費用などを積み上げて価格を算出する原価法から導き出す「積算価格」によって決まる。一方、中古マンションは、主に物件周辺の取引事例から価格を算出するのが一般的だ。現在の新築マンション価格高騰の背景には、アベノミクスや日銀の金融緩和などの影響に加え、東日本大震災の復興や五輪開催に向けたインフラ整備のための人件費の上昇、資材の高騰による工事費や土地価格の上昇などの要因もある。不動産コンサルタントの後藤一仁さんは言う。
「物件の条件にもよりますが、一般的には今のような価格高騰の時期に新築マンションを買うと、将来売却する際に、価格が下落する可能性が高いと言わざるを得ません。一方で、ITバブル崩壊後の2002~2004年や、リーマンショック後の2009年、東日本大震災後の2011~2012年などは新築マンション価格が低くなりました。本来であれば、新築マンションは、このように価格が下がるタイミングで買う方が購入額を維持しやすいですし、場合によってはリセール時の値上がり益(キャピタルゲイン)も狙える」