酒造会社「宮崎本店」の伊藤盛男・東京支店長(撮影/編集部・國府田英之)
酒造会社「宮崎本店」の伊藤盛男・東京支店長(撮影/編集部・國府田英之)

 首都圏で、特に赤ちょうちん系居酒屋に入るとよく見かけるのが、美しい青いラベルが印象的な「キンミヤ焼酎」だ。甲類焼酎でホッピーやサワーのベースとして好むファンが増え、売り上げは右肩上がりを続けている。派手な宣伝をした歴史もないのに、いつの間に、なぜ人気になったのか。背景には、社長が打って出た“奇策”があった。

【写真】青いラベルが美しい! 「キンミヤ焼酎」はこれだ

*  *  *

「下町の名脇役」のキャッチフレーズで知られるキンミヤ焼酎。関東、特に東京都内の個人経営の居酒屋や小規模チェーンでよく見られる商品だ。

 ガラス瓶にブルーの美しいラベルが特徴的。割り方は氷に炭酸とレモンだったり、ホッピーや他の割り材だったりと人それぞれ。牛乳割りを出している店もある。そのままのキンミヤに梅シロップを入れる「梅割り」も、キンミヤ好きにはおなじみの飲み方だ。

 人気の中心地は東京だが、作っているのは遠く離れた三重県四日市市の酒造会社「宮崎本店」。1846年創業と歴史のある酒蔵で、キンミヤは1915年に製造を始めたという。

 ちなみに「キンミヤ」の呼び名が定着しているが、正式な商品名ではなく、「亀甲宮(きっこうみや)焼酎」が正しい名前だ。ラベルには金色の亀甲に「宮」の字が刻まれていて、これが由来となり「キンミヤ」の呼称が定着した。

ブルーのラベルが美しい「キンミヤ焼酎」。小瓶になってから人気が高まっているという
ブルーのラベルが美しい「キンミヤ焼酎」。小瓶になってから人気が高まっているという

■かつて都内の下町でコアな人気

 さて、徐々に本題。いつごろから、なぜこんなに人気になったのか。

 酒場で聞くと「若いころは見たことがなかった」という40代や50代。「地元にはなかったはず」という地方出身の中年男女もいる。

 答えてくれたのは同社に勤めて43年。社内で勤続最年長の伊藤盛男・東京支店長(65)だ。営業畑ひと筋で、主にキンミヤの主戦場である関東で販路拡大に奮闘してきた。好きなキンミヤの飲み方は緑茶割りで、「歳ですから」と謙遜しつつも、店に行けば7~8杯は飲むという。様々な美味しい飲み方を試し、得意先などに紹介しているキンミヤの“伝道師”でもある。

著者プロフィールを見る
國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

國府田英之の記事一覧はこちら
次のページ
主力の4リットルペットボトルを生産縮小