「4リットルサイズは他社と競争するためとても安く提供していて、利益にならなかったんです。とは言え主力商品ですから、生産縮小によって会社全体の売り上げが5~6億円程度下がったと記憶しています」(伊藤さん)というが、この決断が思わぬプラス効果を生む。

 4リットルサイズの商品は大きいため、店の棚やカウンターには置けず、客の目に届かない場所に置かれることが多かった。客はベースの焼酎が何かを知らずに飲んでいたということだ。

 だが、投入したサイズが小さい商品は、店のカウンターや棚にズラリと並べることができる。これにより、客が実物を目にする機会が格段に増えた。飲んで美味しいと思った一杯の、ベースの焼酎が何なのか。さらにそれがキンミヤと呼ばれていると、認知度が徐々に上がっていったのだ。

「販売戦略」という踏み込んだ決断が功を奏したが、人気の理由はほかにもある。後編では、肝心の「味」や時代背景について迫る。

(AERAdot.編集部・國府田英之)

※記事の後編<「この見たことがない焼酎はなんだ」 無名だった「キンミヤ」人気に昔ながらの営業力>に続く

著者プロフィールを見る
國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

國府田英之の記事一覧はこちら