酒造会社「宮崎本店」の伊藤盛男・東京支店長(撮影/編集部・國府田英之)
酒造会社「宮崎本店」の伊藤盛男・東京支店長(撮影/編集部・國府田英之)

 ただ、そうした要因があったとはいえ、肝心の味が悪ければ長くは流行らない。製造法や原料になにか秘訣があるのかと思いきや、そうではないようだ。

 甲類焼酎は主にさとうきびの糖蜜が原料で、繰り返し蒸留して作られるが、その点はキンミヤも同じだという。

「大きな違いは、使っている水です。弊社では鈴鹿山系の伏流水を工場内の地下150メートルの井戸からくみ上げています、ミネラル分が非常に少ない軟水なんです。アルコール度25パーセントの焼酎なら75パーセントは水です。この水のおかげで、他社様の甲類焼酎とは違ったまろやかさと口当たりの良さが生み出せているんです」(伊藤さん)

 水がキンミヤの命。大地震などで水脈が変わったら一大事になると、井戸は2カ所設置しているという。

■「顔が見える」を大事に

 好調な業績に浮かれても良さそうなものだが、伊藤さんにそうした雰囲気はない。

 同社には、昔から培ってきた営業の矜持がある。老舗の得意先を大切にし、新規の取り引き先も、「顔が見える付き合いができる」ことをなにより大事にしている。利益が期待できたとしても、取り引きの要請に応じないこともある。販路拡大だけを目指すのではなく、培ってきたその矜持を守っているのだ。

「どんな人がやっているお店で、どんなお客さんたちがいて…。店主と顔を合わせて話をしながら、時にはお客様と一緒にワイワイ飲みながら営業をした方がやりがいがあるし、なにより楽しいんですよ。昔からキンミヤを大切にしてくださった個人店の店主さんたちや、好きになってくれたお客様たちが口コミで広めてくれたおかげでキンミヤの今がありますからね。これからもキンミヤらしさを大事にしていきたいと思っています」(伊藤さん)

 取材中、伊藤さんの話にはキンミヤが飲める個人経営の居酒屋が何軒も登場し、店主らとの付き合いを語るその表情は実に楽しそうだった。

 秋田市では、伊藤さんも交流のあるキンミヤ愛好家が、なじみの店にキンミヤを紹介し続け、約40店舗が扱ってくれるようになったという。

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