新生銀行は紆余曲折の末にインターネット金融大手のSBIホールディングスに対する買収防衛策を取り下げ、SBIの傘下に入る見通しとなった。買収劇の勝敗のカギを握ったのは、政府判断だ。この結末に至るまでにはSBIの周到な「天下り戦略」が透けて見える。
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ことの発端はSBIが9月に突如、新生銀行の株式につき、金融庁の認可を得た上で、48%を上限に1株2千円という破格の金額で取得し、子会社化するという「株式公開買付(TOB)」の発表だった。
敵対的買収を仕掛けられた新生銀行の経営陣は反発。両者の溝が埋まらぬまま、新生銀行は10月21日、TOBへの条件付き反対を発表した。
だが、SBIが一切の歩み寄りを見せなかったため、新生銀行は、11月25日に臨時株主総会を緊急で招集し、買収防衛策(SBI以外の株主に1株あたり普通株0.8株を付与する新株予約権の割当)を審議する方向で調整していた。可決されれば、TOBが成立してもSBIの保有比率は最大30%程度にとどまり、SBIの買収工作を防御できるはずだった。
ところが、新生銀行は24日夕刻、SBIによるTOBに対抗するための買収防衛策を一転、取り下げ、臨時株主総会を中止すると発表した。この間に一体、何があったのか。そのカギを握ったのは政府判断だった。
政府は新生銀の前身で1998年に経営破綻した日本長期信用銀行に公的資金を注入した経緯があり、預金保険機構とその子会社の整理回収機構を通じ新生銀株を計2割超持つ。
「約2割の議決権を持つ政府が新生銀行の防衛策に賛成しない方針を示したことで、新生銀行の防衛策提案が否決される公算が高まり、取り下げざるを得なくなりました。新生銀行内ではこの政府判断に衝撃が走りました。SBIとの全面対決を回避し、協調的な姿勢に転じざるを得ませんでした」(金融庁関係者)
今回のSBIによる新生銀行のTOBに対する政府判断の背景を官邸関係者がこう解説する。
「今回の判断は北尾吉孝社長が長年、培ってきた政権幹部や金融庁との太いパイプが少なからず影響した可能性が高い。具体的にはSBIは金融庁、財務省などあらゆる省の幹部らを次々と天下りさせてきたことで、今回の政府判断に影響を及ぼしたことは否定できない。こうしたSBIによる大規模な天下り“工作”は、さすがにやり過ぎという声も出ています」