不倫がなぜいけないかは理解出来る。でも、そのときの当事者にしかわからない事情もある。もちろん、不倫に怒っていた友人も、あたしが知らない事情があったのかもしれない。本当に怒りを向けたい矛先は、芸能人じゃなかったなんてこともあるのかもしれない。
不倫は悪いといっていい。けどその先、だから絶対に許さないという部外者の感情は、正義なのだろうか。そして、それは個人の尊厳を中傷することにまで行き着いてしまわないだろうか。
物書きでもある自分の正義の鉄槌(てっつい)が、誰かを傷つけるなんてことにならないといい。腹を据えて仕事しよう。
室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中
※週刊朝日 2021年12月10日号