一方、スポーツ専門メディア『コール・トゥ・ザ・ペン』は「鈴木誠也にとって理想の5つの行き先」(11月25日付)と題し、その行き先にレンジャーズ、メッツ、マーリンズ、マリナーズ、ブレーブスを挙げた。記事では、これらの球団を予想する理由を次のように綴っている。

 まず、レンジャーズは、「スターを切実に必要としている絶望的なチーム」であると述べ、右の強打者と中堅以外の外野手の補強の必要性があると指摘。鈴木を獲得できれば、「レンジャーズのニーズを即座に満たし、本拠地のグローブライフ・フィールドに興奮をもたらす」と予想した。

 続いて、メッツは、「外野手が極端な弱点である」と言及し、「鈴木は彼らにぴったりだろう」という。しかし、もし鈴木がメッツに加入すれば、「ニューヨークは彼にプレッシャーを与えることになる」という心配も寄せた。

 マーリンズでは、鈴木のこれまでの経験と打力でチームを牽引できる可能性が示唆されている。同球団はリーグでも若く、経験が浅い選手が多い。また、外野手をみてもレギュラーで出場した3人の今季の本塁打数が28本のみと指摘。そこにオリンピックやNPBで豊富な経験を持つ鈴木が加わればチームに変化を与えるとしている。

 マリナーズについては、外野手が課題であると指摘。鈴木が加入すればポストシーズン進出の可能性が高まるだけでなく、ア・リーグ全体でも驚異的なチームになると予想する。だが、その一方で、鈴木は同球団で長年活躍したイチロー氏と同性かつ外野手でもあることから、プレッシャーに直面する可能性も書かれている。

 最後は、今季ワールドシリーズの覇者ブレーブスだ。同球団は優勝したばかりであるが、現レギュラーの左翼手であるアダム・デュバルよりも若くて、将来が有望な鈴木を加えれば戦力は向上し、引き続き優勝が狙えるとしている。

 このように、現地では様々なメディアが「どの球団が鈴木に最も合うか」という予想を日々立ている。

 しかし、その一方で大きな心配事もある。それは、現在大リーグ機構と選手会の間で行われている新しい労使協定の交渉が進んでいないことだ。現在の労使協定は12月1日に失効するが、期限まで残り数日を切っても合意に至ったという報道がない。

 前述の『ジ・アスレチック』は、現協定の失効期限までに両者の合意がない場合、球団経営者はロックアウト(施設閉鎖)を行い、新協定締結まで、現在FAとなっている選手との交渉も凍結されることになると報じている。もしそうなれば、鈴木との交渉も当然中断される。

 現地からも高い関心が寄せられている鈴木のメジャー移籍は果たしてどんな結果となるか。現行の労使協定問題を含めた米球界の動きとともに、鈴木の行く末に注目をしていきたい。(在米ジャーナリスト・澤良憲/YOSHINORI SAWA)

[AERA最新号はこちら]