あまりにも突然でして、娘を見て「こんなのでいいのか?」と言ったら、あとで娘に「なんていうことを言うの!」と怒られました。
◆四女の結婚は運命かと思った
娘たちは一般の方と結婚させようと思って育てていましたから、なるべく芝居に来させないようにしていました。それでも末娘は、日本の伝統のものを好んでおり、ときどき劇場には来ておりました。この世界のことをよくわかっていると思われがちですが、こちらはすべてをさらけ出してはいませんし、大変なことは隠しておりますから、いいのだろうか、と。
しかし、当人が本当にうれしそうにしているものですから。そういう運命に生まれてきたのかなぁと思いましたね。
《吉右衛門さんと歌舞伎座の縁は深い。初代松本白鸚(はくおう)(1910~82)の次男に生まれ、のちに母方の祖父の初代吉右衛門(1886~1954)の養子となった。歌舞伎座は太平洋戦争末の空襲で焼失し、51年に再建されたが(第4期)、その開場式で俳優総代として挨拶したのが初代吉右衛門だった。そこに幼い吉右衛門さんも出演した。その初代が得意としたのが「熊谷陣屋(くまがいじんや)」。もっとも歌舞伎らしい「時代物」といわれ、当代演じる熊谷直実(なおざね)も名演で知られる。4月のこけら落とし公演の目玉の一つだ。》
新しくできた歌舞伎座を見て、あぁ前の姿のとおりでよかったなぁという思いはあります。2月に音響テストで初めて中に入りました。まだ設備が揃っておらず舞台の感じはつかめなかったのですが、客席は広々としていて、お客様には大変いいのではないかと思いました。
楽屋も広いので、家を追い出されたら泊まろうと思っております(笑)。
歌舞伎座は第4期の開場式に出て、3年前の取り壊し前の閉場式にも出ました。
終戦から歌舞伎座が再開されるまで、歌舞伎は東劇(東京劇場)でやっておりまして、そこで初舞台を踏みました。その後、初代が歌舞伎座で演じました「盛綱陣屋(もりつなじんや)」では、お客様の雰囲気だけは覚えております。肝心の芝居のことは何も覚えていませんが(笑)。