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雫井:何と(笑)。
伊坂:それくらい、雫井さんと僕の作風は正反対というぐらい違うのかもしれませんね。ただ、その人に、時空を超えて(笑)、言いたいです! 「僕、雫井さんと親しいんだよ」「僕の作品、全部読んでくれてるんだぞ!」と(笑)。……あ、確認なんですが、あのコメントしたの、雫井さんじゃないですよね?「雫井脩介を見習え」って(笑)。
雫井:違います!(笑)
■雫井脩介は人間の心情を深掘りする
──雫井さんの『霧をはらう』は、オビにも引用された作中人物のセリフが強烈でした。「もし万が一、冤罪が生まれるとするなら、それはほかでもない、君ら弁護人に百パーセントその責任がある。君ら弁護人だけが被告人を守る役目を任されているからだ」
伊坂:弁護士という職業の責任や覚悟が伝わってくる、いい作品ですよね。僕は職業をがっつり作品の真ん中に据えて書くことはまずないから、雫井さんらしいというか、僕には絶対書けないタイプのお話になっていて、ほんと面白かったです。雫井さんにはメールでもお伝えしたんですが、『霧をはらう』が最高傑作だと思うんですよ。雫井さんらしさがたくさん含まれているうえに、新しい挑戦もたくさんされている。このお話、どこから発想されたんですか?
雫井:『火の粉』(2003年)で裁判官の話、『検察側の罪人』(2013年)で検事の話を書いたので、法曹三者の残りのひとつである弁護士の話もいつか書いてみたいと思ってたんです。死刑制度には廃止論者もいて世界の趨勢もそっちの方向に傾いていたりするんですけど、日本では粛々と運用されている。それを揺るがす何かがあるとしたらというアイデアをひとつ思いついて、そこから具体的な話の構想を進めていきました。
伊坂:被告人のあの性格とか、娘さんとの距離とかが絶妙で、いったい真実はどっちなんだろう、というのが分からなくて、ずっと引っ張られていきますよね。弁護士のパートはもちろん、家族のパートもすごく良かったです。