現在、国が奨励しているのは、地域が一体になって緩和ケアを行うための、「地域カンファレンス」の開催だ。がん診療連携拠点病院が在宅医や訪問看護ステーションと顔の見える関係をつくるために開かれる会議だが、開催が年に1回程度というのが実態だ。今後は「地域緩和ケア連携調整員」という、地域の「つなぎ役」の養成も課題に。在宅医の困りごとを抽出したり、専門職同士をつないだりと、地域のキーパーソンと直接やりとりしながら実務を担う人材だ。
調整員養成の研修を修了した人は、全国で1280人(16~21年度累計)。拠点病院の半数以上が受講している都道府県は、27しかない。国立がん研究センターがん対策研究所事業統括の若尾文彦さんは、こう指摘する。
「23年度に始まる国の第4期がん対策推進基本計画に向けて、地域緩和ケアの連携が焦点になっていますが、『顔の見える関係づくり』も道半ば。また、がんと診断された時からの緩和ケアの推進も議論されていますが、今も『緩和ケア』という言葉を出すだけで怒り出す患者さんがいます。緩和ケアがもっと広い概念で、早い時期からの利用が有効だと、多くの人に知ってもらうことも大切です」
(ノンフィクションライター・古川雅子)
※AERA 2022年11月7日号より抜粋