「報道カメラマンのような撮り鉄以外のカメラマンが考える『いい写真』は、人物が写り社会情勢なども反映され表現された写真です。一方、撮り鉄が重視するのは資料性があり記録性も高い写真。というのも、鉄道雑誌は特集の際に古い鉄道写真を募集するので、それに採用されることを意識するからです」

 しかも、最近はSNSで写真を見せ合う時代。「いいね!」の数を競い合っている。ネットで写真を販売することも可能で、それがニュースサイトで採用されることもある。そうした状況が撮り鉄の過熱に拍車をかけているという。

 しかし、こうしたマナー違反に、多くの撮り鉄は心を痛める。

「肩身が狭くなりました」

 と、撮り鉄歴20年以上だという男性(35)は嘆く。

 大多数の撮り鉄は、ルールやマナーを守り写真撮影を楽しんでいる。だが、ごく少数の撮り鉄がルールやマナーを無視するため、世間では「撮り鉄はろくでもない」というレッテルを貼られていると感じると話す。

「いい写真を撮るために燃えるのは理解できます。だけど、他人や世間には迷惑をかけるようなことはしてはいけない」

 先の小林さんは、撮り鉄は鉄道あってのもので、その逆はないと強調する。

「そのためにも鉄道の運行に支障をきたすようなことも、他人に迷惑をかけるようなこともしてはいけません。このあたりの考えが身についていない撮り鉄がいますが、これは自省によって身につけるべき性質のものであり、撮影合戦が過熱している状況の中では難しいと思います」

 そして、こう言う。

「鉄道写真を一生懸命撮影しようとする人が、トラブルを起こしている状況を一般の人がどう見ているか。撮り鉄のみなさまは考える必要があると思います」

(編集部・野村昌二)

AERA 2021年12月13日号

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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