AERAで連載中の「この人この本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。
この記事の写真をすべて見る『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』は、政治がわからないまま大人になってしまったフリーライターの和田靜香さんが、衆議院議員の小川淳也さんに体当たりで政治対話を挑むノンフィクション。和田さんが感じてきた「将来が安心できない」「働いても時給が安い」「嘘が許される」「女性差別が当たり前」などの不安や怒りを今の日本が抱える課題に重ね、小川さんとの対話を通じて問題の所在と解決の糸口のありかを探っていく。著者の和田さんに、同著にかける思いを聞いた。
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フリーライターの和田靜香さん(56)は、これまで音楽と相撲が取材のフィールドだった。収入は不安定でバイトで生活を支えることも。賃貸暮らしで年金は心もとなく、将来は不安ばかり。社会に頼りたくても、自己責任論が追い詰める。不安に押しつぶされそうになっていたとき、衆議院議員の小川淳也さんと、映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」をきっかけに、AERA dot.の取材を通して出会った。
「私はずっと不安の出口が見つからないモヤモヤを抱えていました。でも一方で、このモヤモヤには何か原因があるんじゃないか、という気持ちも。何度、挫折しても諦めない小川さんなら、私のモヤモヤをぶつけても応えてくれるんじゃないか。そう思い込み、一緒に本を作りたいと、必死で手紙を書きました」
しかし、政治の世界は未知で本の内容もノープラン。「何がわからないのか、どこから考えていいのかもわからないんです」と堂々と話す和田さんを前に小川さんは絶句。頭を抱え、政治の初歩がわかる本を読むことからすすめた。
本書は、こんな政治の素人とエキスパートとの広く深い隔たりから始まる。発売前からSNSで話題になり、版を重ね、7刷りに。和田さんには取材が殺到した。注目されたのは、「私の本」と感じる読者からの反響が大きかった。