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 最近、活動休止を発表したYouTuberが何組かいます。YouTuberが活動休止をする理由は、炎上や謹慎やトラブルもありますが、実は体調不良も非常に多いものです。

 YouTuberの人気の指標は再生回数という明確な数字が公開されています。ライバルや競合の動画の数字も可視化されるため、数字のプレッシャーは凄まじいものなのです。同じような指標としてテレビ番組の視聴率がありますが、YouTuberの場合、ほぼ全ての責任が演者にふりかかります。YouTubeでは動画をヒットさせることも難しいのですが、ヒットさせ続けることはもっと難しいのです。上がり続ける視聴者の期待値と、それに伴うプレッシャーは、YouTuberに重くのしかかります。

 また、視聴者との距離が近いために、コメントや反応もすぐに捉えることができます。必ずしも自分に好意的な人ばかりではないため、残念ながらアンチコメントや誹謗中傷に心を病む人も少なくありません。顔出しをしていて有名になると、プライベートでもYouTuberとしての自分のイメージが求められたり、生活に支障をきたします。コンテンツが少しでもコケると「オワコン」と呼ばれ、不発の動画が続くと精神的に辛くなります。

 働き方としても、更新頻度を維持するために労働時間が長くなることも少なくありません。長時間休みなく働き続けることにより、肉体的にも精神的にも疲弊することがあります。これら全ての要素を持って、YouTuberは「病みやすい仕事」だと言えます。統計的なデータではありませんが、YouTuberとして人気が出て、動画を量産し続けて2年ほど経つと、休みを求めるようになる人が多いと感じます。その一方で、休まずに働き続け、動画で目が死んでる状態になっているYouTuberも少なくありません。YouTuberがメンタルを健全に保ったまま活動するためには、強靭な精神と実力が必要です。視聴者からの反応や数字に、心を疲弊させないように、淡々と動画を作る精神を持ってると病みにくいかもしれません。

 人気が高まる過程で、本人がなぜ自分の動画が支持されているのかを把握できていないと、不安は常につきまとうものです。「なぜ人気なのか」「どうすればヒットを安定して打つことができるのか」ということを性格に把握していることが重要になります。視聴者が何を求めているのかを考え続ければ、一時的に迷走やオワコン化したとしても復活することができます。自分のチャンネルの再生回数が落ちたからといって、流行のジャンルに手を出してしまって、どんどん数字が落ちていき、さらに迷走するという負のスパイラルに陥ります。自分が何を見せたいのかよりも、視聴者が何を見たいのかを研究する作業が重要です。

 YouTubeで人気者になる人の多くは、最初は自分の好きなことを動画にして取り組みます。一定の視聴者のニーズと合致することによって再生回数や登録者数は増え、チャンネルは成長します。その過程で、自分のやりたいことと視聴者の見たいことに隔たりが生じることもあります。このズレを解消し、さらにチャンネルを成長させたいとするならば、YouTuberが選ぶべきは、視聴者が見たいものを提供することだと思います。本格的に仕事としてYouTubeに取り組む段階です。演者の「楽しさ」が減るので、モチベーションを保つことが難しくなっていきます。とても意外に思われるかもしれませんが、YouTubeの視聴は楽しくても、制作はとておも苦しいものです。それはテレビでも同じかもしれません。私は学生時代に、視聴者としてクラスの子達とゲラゲラ笑ってテレビを見ていたため、番組に対しては楽しいイメージしかありませんでしたが、見るとやるとでは大違いだったのです。

 人気のYouTuberたちにとって、ある意味「禁句の質問」として知られているのは、「楽しいですか?」です。この質問をされると、一瞬思考が停止します。人の評価に常に晒され、再生回数や登録者数のような成績が公開されている状態で、健全な精神を保ち活動し続けるのは、強靭なメンタルを持っている人だけです。YouTuberのメンタルケアは、本人たちと同じ立場や非常に近しい人々にしかできないため、皆さんの周りでもしYouTuberになりたい人がいたり、YouTubeで人気になっている人がいたら、思っている以上に精神的に大変な仕事だと認識すると理解が深まります。