倉庫に保管されている「アベノマスク」を含む布マスク
倉庫に保管されている「アベノマスク」を含む布マスク
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 臨時国会が始まり、与野党の論戦が始まった。昨年の自民党総裁選で敗れた後、「岸田は終わった」と言われたが、今や、日本の政治は、その岸田氏を中心に動いている。菅義偉前総理も安倍晋三元総理も急速に「過去の人」になって行く感がある。

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 だが、最近の安倍氏の動きは、その流れに必死で抗っているかのようだ。

 11月には、党内最大派閥細田派を引き継ぎ、安倍派としてそのトップになった。岸田総理をわざわざ官邸に訪ね、岸田氏を支えると語り、菅氏と会食した事実を明かし、同氏グループとの連携をにおわせるなど、自己の影響力を誇示している。

「モリカケ桜」に象徴される在任中の自身のスキャンダルは、どれ一つ真相が解明されていないが、総理が2回交替し、衆議院選挙も経たことで、遠い昔の話になった。刑事責任は問われないまま、順次時効が成立し、蒸し返されることもなくなる。まさに「時」の効果だ。

 安倍氏は、「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事でもある」といった、日本を戦争に巻き込む判断について党内議論をリードし、時の総理の手足を縛ろうとしている。マスコミはこれを大きく取り上げるが、過去のスキャンダルに関する彼の政治責任については、ほとんど問題にしようとしない。安倍氏は自信を深めていることだろう。 

 だが、そんな安倍氏にも都合の悪い話がある。「アベノマスク」だ。   2020年4月に唐突に発表された布製マスク全戸無料配布。当時の総理秘書官ら官邸官僚の発案で、安倍氏の了解のもとに官邸主導で進められた。

 直後に日本医師会会長に布マスクにウィルス防止の役割はあまりないと言われ、小さ過ぎる、ゴミや異物が含まれている、調達企業の選定が不透明など悪評の極み。最後は配布断念となり、115億円が無駄となった。

 しかも、本件は、過去の話ではない。余剰マスク保管のために倉庫料などが毎月7500万円もかかり、処分にも追加費用がかかるからだ。

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自民党政府に特有の「負のループ」とは