──パラダイスというのは多くの人にとって常夏の夢の島というイメージがありますが、ここで意味したパラダイスとは?
「娘リリーがバリにひかれたのは、現地の人たちの人間性や価値観の率直さに魅力を感じたから。僕は異なる国の文化や価値観についてリサーチするのが好きでね。『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』もそうだったが、異なる土地の文化や価値観に関心があるんだ。どんなところでも僕にとって、何か新しいことを学べるところはパラダイスなんだよ」
──今回なぜ舞台をバリ島に設定したのですか?
「西洋社会から最も遠いところに思えたからだ。バリ島で海藻の養殖を営んでいる青年、というのもシカゴの弁護士とは対照的な存在だと思ったからだよ。思い入れがあったので、コロナのためにバリ島で撮影できなかったのは、本当に残念だった。脚本を書いているときは、行けるだろうと思っていたんだ。ところがパンデミックは解決するどころか、完全に外国人の受け入れを禁止した。代わりにオーストラリアで撮影するというのは苦しい判断だった。いまだにバリ島に足を踏み入れていないんだ。休暇がとれたら行きたいね」
(高野裕子[在ロンドン])
※週刊朝日 2022年11月11日号