──娘と両親の関係に加え、中年の元夫婦が人生を振り返り、実現できなかった夢や後悔などについて考えるあたりは、多くの人が共感できるポイントですね。
「人は年を取るにつれて、やりたかったことについて考え、おそらく今後もかなうことはないだろうと思い、その事実を受け入れようとするものだ。でも、新型コロナのパンデミックがそんな人々の考え方を少し変えたんじゃないだろうか。パンデミック中にそれまでの仕事を辞めたり、思い切って職を変えたりする人なども増えてきた。人生は、他人を喜ばせるためにあるのではなく、自分のために選び、歩んでいくものだと言いたかった。それがたとえ、周囲の人に迷惑をかけることになってしまっても」
──ジョージとジュリアのユーモラスな会話に加え、パーティーのダンスも笑いを誘います。あのシーンはどのように生まれたのですか?
「二人とも、ダンスシーンがあることは事前にわかっていたから、本気で取り組んでくれた。『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』を撮影したときも、ピアース・ブロスナンやコリン・ファースは、ゼロからダンスを学ばなければならなかった。彼らはダンサーでもシンガーでもないのは十分承知している。彼らは可能な限り、全力投球してくれた。本作もあのときと同じだった。ジョージとジュリアも、そこを理解してくれた」
──ハウス・オブ・ペインの曲をジョージがリクエストして、振り付けなしで自己流の踊りを披露したそうですが。
「あれこそジョージのオリジナル・ダンス・ムーブだよ。撮影前に使用する3曲を送って、どんな踊りにしたいか提案してもらったんだ。膝に手をあてて踊るとか、いろいろな案を出してくれて、とてもうまくいった。撮影ではジョージも笑いが止まらなくなったりした場面もそのままカメラに収めたんだ。ジョージの出演映画をたくさん観たが、あれほど自然にリラックスしたのは観たことがない。彼が本気で踊る様子を目の前にして、若手キャストは驚きを隠せなかったよ。とにかくすごく楽しい撮影だった。ただ、二人とも一晩中踊れるわけじゃないから、手際よく時間を無駄にせずに撮影しなければならなかった。それに、演じている側が楽しんでいても、映画を観ている人が楽しくなければ、制作側の自己満足の作品にしかならない。観客が心から楽しめるかも重要視した」